2012年10月1日月曜日

QMS:規格7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化(顧客関連のプロセス)


組織は,次の事項を「明確にし,確定しなければならない(determine)」として,

a)お客様との間で確定させる仕事は,営業部門だけが行うのではなく,関連部門全てが同意して行うものとしています。目先の売上や利益のために,出来もしない仕事を受けることのないようにということです。

また,「引渡し」は,製品を顧客に届けるまでを範囲としています。例えば工場を出るまでではなく,顧客が指定した引渡場所まで責任を持つと言うことです。

「引渡し後の活動」は,顧客からの瑕疵担保責任の要求,引渡し後の定期検査・修理や要員の訓練提供やそのサービスの要求などです。

b)原材料等の生産財としての製品というよりは,消費者製品を意図しています。

c)完成後の製品だけではなく,上記a)b)を進めて行く過程すべてを含んでいます。ここは仕組みが必要なところです。

d)なんらかの該当するものがあれば,顧客が明示的に要求していなくとも,満たしておかなければ引き渡し後にクレームとなります。

尚,この条項は「製品に関連する要求事項」とありますので,購買品,試験・検査手法,装置,保存に関連する包装,輸送などの要求事項も含まれています。

2012年9月18日火曜日

QMS:規格7.1 製品実現の計画(3)


注記1の意味として,

製品には,「製品を受注するごとに固有の製品実現プロセスを計画,構築してから製品を実現する個別プロジェクトタイプ」と,「量産品のように決まった製品実現プロセスで生み出すタイプ」があります。 

前者の場合は,受注毎にプロジェクトのための「品質計画書」を作成する必要があることが多いと言っています。従って,a)~d)の計画策定行為を文書化した「品質計画書」を作成するということを品質マニュアルで記述することになります。 

一方,後者の場合は,既に製品実現のプロセスが存在していますので,その実態を品質マニュアルに記述すればよいことになります。ただし,新製品など従来とは異なる手順や基準が必要な場合は,プロジェクト型と同様な手続きが必要となります。

時々,全くの新製品であるのに,いきなり仕様や基準が品質マニュアルの改定として登場する事がありますが,品質管理・品質保証の観点からすると,仕様や基準を確定したプロセスや基準,レビュー・テストの結果を開示せず,言い換えると,「企画の質」・「ねらいの質」の達成状況を示さずいきなり「できばえの質」で品質を保証するというのは,「この製品だいじょうぶかな?」と思ってしまいます。

また,「企画の質」・「ねらいの質」を開示しないのは,「このビジネスは成功するのだろうか?」,と思ってしまいます。 

注記2の意味は,
条項7.3は「プロダクト:製品」の設計・開発についての要求事項について言及したものであって,プロダクトを実現するための「プロセス」の開発用の記述ではありませんが,同様に使えるだろうと言っています。ただし,注記は要求事項ではありませんので使うか使わないかは企業が,製品特性を考えて決めればよいとしています。個人的には,使用した方が圧倒的によい結果を得られると思っています。

2012年7月8日日曜日

QMS:規格7.1 製品実現の計画(2)


規格の要求としては,

a)製品を実現するために必要な品質目標と要求事項を明確にします。「品質目標」は,箇条5.4.1でトップマネジメントに対してコミットすることを求められている担当部署,階層で明確化させた製品目標のことで,「要求事項」についてはその「目標」に対しての許容限界のことです。(品質目標と要求事項がごっちゃの企業が多いです)

b)当該の製品を実現するためにどういうプロセスを確立するのか,それを稼働するためにどのような文書類を確立する必要があるか明確にし,また,稼働のためにどういう資源が必要かを明確にします。

c)その製品のためにどういう検証,妥当性確認,監視,測定,検査,試験活動が要求されているか,そして,製品の合否を判定する基準はどうあるべきかを明確にします。
d)製品実現のプロセスが要求された条件を満たし,製品実現プロセスで生み出された製品が要求事項を満たしていることを実証するために,どういう記録を取るべきかを明確にします。

2012年7月7日土曜日

QMS:規格7.1 製品実現の計画(1)


この条項は,条項4.1QMSの適用の対象である,適合製品を実現する為の製品実現プロセスについて総括的に記述します。各プロセスをきちんと整理して,当社のプロダクトは何か,そのクオリティとは何かについて整理し品質計画書に該当するものを明らかにします。

よく抽象的な,プロダクトを製品としますが,当社製品のアピールしたいこと,顧客に訴えたい当社のその製品に込めた嘘偽りのないプロダクト名を明らかにすると,整理が捗ります。製品カタログ,パンフレットに書かれていることだと思います。

例えば,「コンピュータシステムの設計開発」ではなく,「お客様の問題を解決するためのITを活用したソリューションの提供」とすると,そのことを実現するためにどのようなプロセスで,手順書・基準・記録・ツール・設備・要員等を使用して活動しているかが洗い出せます。また,間違っても品質目標が「バグゼロ」とはならないです。

「プロダクト:製品」や「品質目標」を登録証に記述する一般名称と同じとして品質マニュアルを書いていくと,実活動とは異なる,或いは事務手続きばかりの記述となり,経営に寄与しない,余分な工数・コストがかかるQMSとなります。

2012年7月3日火曜日

QMS:規格6.4 作業環境


この条項は,「確実にする」という要求ではなく,また記録も要求されていません。

各部署や階層において製品要求事項への適合を達成する為に自部門,階層で必要なインフラストラクチャーを特定し,その特定されたインフラストラクチャーを組織で決められた職責の権限で,選定・選択・充足するようにすることを品質マニュアルに記述するのが一般です。

特別なことを企画は要求しているのではなく,会社経営・運営で常日頃行っていることを整理すればよいと思います。

また,その適切性は,内部監査で,特定,選定,運用などの適切性を評価すればよいと思います。

尚,この作業環境の「環境」は,ISO14001が扱う「環境」とは異なります。また,「労働環境」のことでもありません。
 

品質マニュアルや品質関連文書でのルールは,兎角制約事項でネガティブと受け止められがちですので,たとえば,従業者のやる気の喚起の外発的動機付けの一環として「社内表彰制度」などがあれば,ここに記述しても構わないと思います。

(どこの条項でも,追加の条項でもお好きなところに書かれればよいです。)

2012年6月26日火曜日

QMS:規格6.3 インフラストラクチャ


経営資源の中で,

1.建屋,作業スペース,各種ユーティリティなどの基盤インフラ

2.設備機器とそれを動かすためのソフトなどの設備インフラ

3.輸送,通信などの情報システムなどの情報インフラ

4.その他のインフラ

尚,規格はこの条項で対象にするのは「プロダクト要求事項への適合を達成する上で必要」なものとしています。仕事のことは全てQMSで整理するのであれば,規格の意図以外のものもあっても問題ありません。

ヒト・モノ・カネ・情報・経営のスピードなど,時代と共に経営資源の範疇が増えてきており,それらをひっくるめて,「広義のプロダクト」があるわけですから,「狭義のプロダクト」や「正に製品の品質保証」に留まっていたのでは,ISOは「投資」ではなく「コスト(経費)」になって閉塞感が漂います。

事業リスクや事業継続なども必要であれば,「広義のQMS」として役立つのであれば,項番を追加してでも,QMSのマネジメント領域にする方法もあります。

2012年6月25日月曜日

QMS:規格6.2.2 人的資源 力量,教育・訓練及び認識(4)


d) 組織の要員が,自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し,品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識することを確実にする。」とありますが,これは

「自ら活動の品質目標の達成との関連性を認識していること」ですから,仕事のマニュアル等にその仕事は何のためにやる(目的)のか,なにの役に立つのか書いておくとよいですね。

人間,仕事に目的があり,「頑張ったぞ,やった~と」実感できると,「よい仕事」をするようになります。個々人も週に数回は,「ガッツポーズ」ができるような目標設定ができル仕組みがよいと思います。


時々,a)c)の次に,d)があり,おまけにe)に記録のことが書いてありますので,このd)もトレーニングの続きとばかり,「自覚・認識教育を行う」とされている企業がありますが,「ダメ,間違い」ではありませんが,なにか「洗脳教育」のように感じられて,これなども,ISO/JISの悪い評判を生んでいる一つかも知れません。


e)教育,訓練,技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4参照)。」では,ISOは,「education教育」と「training訓練」「skills 技能」「experience経験」と教育と訓練を分けて書いて有るのですから,6.2.2のタイトルの「教育・訓練」ではなく「トレーニング」に替えてほしいですね。

2012年6月17日日曜日

QMS:規格6.2.2 人的資源 力量,教育・訓練及び認識(3)


1.作業単位を決め,プロダクト要求事項を満たし,作業効率(手順書を見ながらでは困りますね)を考えて,必要な力量を決まる。ただし,交代や補充が当面ない作業であれば,順次とか適宜でもよいでしょう。

2.その作業にあてる可能性のある要員の現在の力量を評価する。

3.必要な力量にギャップがあれば,実際にその作業に就けるまでにトレーニングを行うか,作業の質,効率性,コストなどを考えて,その候補者を就けずに(将来はあるかも)他の力量のある人に交代させるか,外部委託を考える。

キャリアパスや要員の将来,会社の将来構想から先行したりしてトレーニングをおこなうのは会社の自由判断です。


各要員の力量は,完璧を考えなくとも,当面分かる範囲で調査しておくとよいと思います。今実際に作業に就いている要員の力量を調査することが,その作業に必要な力量になることもあります。

現実には,現在就いている作業に必要な力量を超える方や,他の複数の作業に必要な力量を兼ね備えている方が大半と思います。これらの調査を行うことで,「人材」ではなく宝の山の「人財」が分かります。場合によっては,他のビジネス領域へ進出可能な「人財」が眠っているかも知れません。


QMSは,締め付けや規則規則のかたぐるしいものではなく,新しい発見や,やる気をもたらすもの,個々人がアピールできるものであって欲しいですね。

2012年6月10日日曜日

QMS:規格6.2.2 人的資源 力量,教育・訓練及び認識(2)


企業は,従業員に対して,仕事を間違いなく,また必要な作業効率で実施させるために「教育」ではなく「トレーニング」を行ないます。「教育」であれば,学校のように従業員から「授業料」を取ることになります。「訓練」は,日本では,「地獄の特訓」を思い浮かべるかも知れないので,JIS語である「教育・訓練」を創作したのかも知れません。

(翻訳委員会は,とても親切で,親心があり,大感謝していますが,ここは「気を遣いすぎて,返って誤解を生じている」感もあります。)

規格は,過去の学校教育,職業教育,訓練の経歴,本人が持っている技能の評価,それまでの各種訓練の実績評価,従来の経験を踏まえて,担当する仕事に必要な力量があるかを判断して,力量がある要員を仕事に就けなさいと要求しています。

もし,力量が不足しているときは,トレーニングを受けさせ,あるいは指導を受けながら作業をおこない,しかるべき指導者がその確認をすることになります。

作業の質が確保できないようであれば,他の力量のある人に替えるか,場合によっては外部委託もあるかも知れません。

規格は,どのような方法を用いても構わないので,プロダクトの要求事項を満たすようにしてくれと言っているのです。顧客からしたら当たり前のことですね。

2012年6月9日土曜日

QMS:規格6.2.2 人的資源 力量,教育・訓練及び認識(1)


2000年版のb)の記述では,教育・訓練を行うことが必ず必要なように誤解されろ懸念があるということで,2008年度版のJISは,「該当する場合には(必要な力量が不足している場合には)」を追記しています。


しかし,この説明では,「能力」と「力量」を混在する結果となりました。それは,a)項によると,「力量」は仕事が要求することになっており,人が保持していることではなく,仕事が必要とする力量に人の能力が届いていることが要求されますので,「必要な力量に到達していない場合には」,或いは「必要な能力が不足している場合には」としないとa)と矛盾することになります。


b)項は,必要な力量が持てるように」という記述を「その必要な力量に到達することができるように」と修正されましたが,それでも「力量」のい認識が現れています。


ただし,このことで6.2.2の解釈が大きく変わるものではなく,というよりも「さら~と」読んでいることが多く,全般としての誤解の方が多いようです。94年度版の「教育」が必須の残像があり,規格の「トレーニング」の意図がJIS表現の「教育・訓練」では曖昧です。

2012年6月4日月曜日

QMS:規格6.2.1 人的資源 一般


「製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員」とは,日本では,登録範囲の役員以外の管理職をも含めて「規格で要されている対象者」と勘違いしている企業が殆どです。

「要員:Personnel」は管理職の指示によって所定の作業や事務をする人を指しています。

従って,スタッフや管理職は「能力」で採用し評価されるもので,力量で採用されるものではないというアングロサクソンの常識が日本では思いつかないので,管理職も含め全従業者を対象にトレーニングをしている企業が多いです。 

日本では,学校を卒業して定時採用され,徐々に色々な仕事を覚え,管理職なるというキャリアパスですので,現実として「能力」と「力量」の区別などはなく(辞書でも),また年功序列が長く続いていたこともあり,仕方ないのかも知れません。 

別に,規格はスタッフや管理職にトレーニングを施してはいけないとは言っていませんので,製品要求事項への適合のためにトレーニングが必要であれば,続けられればよいと思います。 

「力量:competence」とは,ISO9000では,「知識と技能を適用するための実証(demonstrated)された能力」と定義されています。知識があり,それが仕事でやって見せられ,そして認められなければならいということです。当然,見て認める人はそれだけの能力がある人でなければなりません。 

「力量がなければならない」とは,「力量を確認する方法と認める仕組みがある」ことと,それが実行されていることが必要であることを意味しています。

2012年6月3日日曜日

QMS:規格6.1 資源の提供


この条項の要求事項は,条項1.1a)b)を受けて書かれています。QMSを運用(実施,維持,有効性の改善)するのですから,当然ながら,経営資源である「ヒト,モノ,カネ」が必要ですので,当たり前のことが書いて有ります。 

この条項の主語は,「組織」ですから,経営者に限定していません。責任と権限で決められた部門管理者なども該当します。


当たり前の要求ですが,「当社のQMSは役立たずだ」などと言っている経営者や管理職の多くは,この経営資源を使用していないで,目先の売上,利益,生産性などのノルマのみが関心事であることが多いです。 

きちんとQMSを運用せずに「ISOは役立たず」というのはどうかと思います。


ISOのフレームワークを用いたQMSを運用すると言うことは,従来の経営や業務運用のやり方を変えると言うことです。これらを替えないのであれば,「ISOの日や時間」が必要となり,余分な時間と資源の浪費以外の何者でもありません。

2012年5月13日日曜日

QMS:規格5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット


トップマネジメントの「意思決定」と「アクション」が求められています。MRの目的に関して、はっきりと意思表示が重要です。

経営資源についても言及しなければ、「軽いことばの遊び」になります。


従業員から「うちの社長は流石!」と尊敬できるかどうかですね。

経営責任を担っていない事務局が,作文することだけは避けましょう。

2012年5月12日土曜日

QMS:規格5.6.2 マネジメントレビューへのインプット


MRで検討すべき項目が示されています。いづれもMRの有効性,目的に対する結果の評価を行うためのものです。

経営層の中から社長が自分名代として選んだ腹心あるいは次期経営者と,内部監査の責任者から,社長が「なるほど,彼らはこのように当社の活動を診ているのか,その根拠はこれか」と評価できる内容が「MRへのインプット」のレベルです。

ただただ,記録を寄せ集めたものを添付したり,集計値を見せても社長は,「全部,俺が分析し,考えろ」と言っているのかと思うだけです。



MRごっこ」など、ムダな時間や記録はその分利益を減少させます。こんな状況を見ている従業員のモチベーションの低下を考えると、大損失ですね。(品質意識はなくなる)

MRの記録を見ると,その会社のレベルが一目瞭然として分かります。

2012年5月10日木曜日

QMS:規格5.6.1 マネジメントレビュー 一般


各部署、階層で実施している品質をマネジメントするために以前に決めた現行システムが、現在の状態(組織や組織が行っている業務、環境などの変化等)と比べて、

・目的に対して適切であり続けているのか

・使用している方法が妥当であり続けているといえるか

・その成果(アウトカム)は目的に対して適切であったのか

という観点で定期的にレビューし,評価し、必要な処置を取ることをトップマネジメントに求めています。

5.6.1 一般は,結構可愛そうな条項で,マネジメントレビューに関しては,一番肝心な「目的」が記述されているにもかかわらず,読み飛ばし,MRのインプットとアウトプットの項目に何か書かれて居れば,「MR」はよいと思われている傾向があります。 

MRは経営者自らおこなうことに関する要求ですので,非常に大切です。事務局の作文で,印鑑だけあればよいものではありません。 

MRの記録に関して,JISでは,「マネジメントレビューの結果の記録は,・・・」となっていますが,ISOはMRで,「なにがどのように議論されたのか,なにが決まったのか,決まらないものはなにで,それは誰が今後どう行い,報告するのか」等のMRでのレビュー内容(顛末)の記録を求めています。 

一番肝心なのは,規格は日常的な監督は組織の報告、検討に任せ、MRは日常的な変化の裏に潜む制度的な「悪さ加減」をレビューすることを経営者に求めていることです。このような全社を大所高所から見て,収集した各種データから,自社のシステムの善し悪しをみることができるのは,「経営者」しかいない,言い換えれば,それが分からないようでは経営者としての能力が不足していると言えるぐらい重要なことを言っています。

2012年5月7日月曜日

QMS:規格5.5.3 内部コミュニケーション


ISO規格は「組織内に,QMSの有効性に関する情報伝達・交換を行うために情報伝達・交換プロセスとその実行」を求めています。


JIS規格は,「communication」を「コミュニケーション」と「情報交換」二通りの日本語を使用していますが,もはやカタカナの「コミュニケーション」に統一してもよいほど一般的となっています。


返って二通りの約があると,規格の意図として異なるのではないかと勘ぐりたくなります。因みにISOは,JISと異なって,一文で記述されています。

2012年5月6日日曜日

QMS:規格5.5.2 管理責任者


ISO規格は,「トップマネジメントは,管理を構成する中の人を指名して、他の責任にかかわりなく,次に示す事項を含む責任及び権限をもたなければならない。」と言っています。職名でもありませんし,「管理責任者」という固有名詞を使うか使わないかは組織に判断です。

より意識を持たせる,モチベーションを与える,周りに認めさせるということが必要な組織であれば,使用してもよいですが,逆に言うと,「作業の質」に関して社長の代わりに経営陣を代表して実践している方を「指名」してほしいものです。決して「名誉職」でも「御輿を担がれる方」でもなく,社長同様,常に汗水垂らした機関車であって欲しいです。 

ISO事務局なるものをライン或いはプロジェクト組織で編成し,ISOに関する実務はすべて行わせ,管理責任者欄にハンコを押すだけで,「おい,ここまでやらんあかんのか,智恵をつかってISO時間を短くせい!」などと言わないようにして頂きたいですね。

このJIS規格は,日本の現状から,よかれと思って「管理責任者」という項番名をつけたと思いますが,返って誤解を生ずることが多く,弊害となっていますので,ISO規格通りに次回は戻してもらった方がよいと思います。
ISOは,「戦略的投資」であり,「経費」ではありません。ISO活動を「戦略的投資」と位置づけて活用している組織は会社に貢献しますが,「経費」と考えている場合は,「経営の足を引っ張るだけ」です。

2012年5月5日土曜日

QMS:規格5.5.1 責任及び権限


トップマネジメントは,責任と権限を明確にし,組織全体に伝達する仕組みを作り,その仕組みを品質マニュアルに記述させ,順守し,順守させ,必要があればそのことを説明出来るようにしなさいと言っています。 

企業としては,ごく当たり前のことですが,品質マニュアルの記述と現実が異なることも多いと言われています。 

指示・命令系統が曖昧であったり,個人的な関係や力加減で適切に伝わらないことがあります。報告が,報告を受け取るひとにタイムリーに伝わらないのは,このルートが日常的にないからです。ニュースでは事件・事故の説明の中でよくこのことが理由として取り上げられているということは,この双方向のルートが機能していなければ大なり小なり事件・事故や業績にマイナスの影響を与えているということですね。 

また,日本の企業は,「責任」は負わせますが,「権限」は渡さないことが非常に多いですね。「責任」を負うことは「美徳」ですが,「権限」を欲するのは「欲」であり「要求」のイメージがあるようです。 

よく社長が,部下がやったことで,「自分は知らなかった」とテレビのカメラに向かって話しをしていたり,最近では,政治家が「秘書」が勝手にやったことで自分は関与していないと言っています。  <見るに堪えないですね。> 

これを口にした社長は,ほとんど即刻社長の椅子を手放しているという現実があります。「上に立つもの」が「組織構造を作っていない」「それを実行させられない」「保身のために言い逃れを行う」のは,外部から見ると「情けない」「100%信用できない」となるからでしょう。

2012年5月4日金曜日

QMS:規格5.4.2 品質マネジメントシステムの計画


「品質マネジメントシステムの計画」とタイトルにあり,トップマネジメントに次のことを確実にしろと言われても,何のことかよく分からないのが本音ではないでしょうか。 

ISO規格は,「planning」ですので,「品質マネジメントシステムの計画立案」といわれた方が,少しは分かるような気がします。 

a)項は,ISO9001規格を活用したQMSを構築するときの構築計画のことです。

従って,最初か,或いは再構築のときのことを言っています。計画を立ててPDCAを回せと言っています。7.3項などが役に立ちますが,最初の構築時点では,構築が終わり運用に入った頃に分かるので,後の祭りが多いです。 

b)項は,組織変更やサイト移転,設備の大幅な入れ替え等の時には,準備や新しい仕組み,手順の変更が伴うので,普段と異なる活動を行ったり,一時的な仕事のやり方をとることがあります。そのときにも,「感と度胸」で乗り切るのではなく,例えば臨時のQMSや,統一の取れた計画的な活動のための仕組みを作るなどして,顧客が安心して,従来通りの製品を受け取れるようにしなさいと言っています。

親切すぎて,返って分かりにくくなっています。4.1項の次あたりの若い項番の方がよかったと思います。

2012年5月3日木曜日

QMS:規格5.4.1 品質目標


組織内の関連部署で,関連階層ごとの品質目標を明確にする行為を求めている7.1a)項が確実に実行されるように仕組みを作って実行することを求めています。 

そのためには,組織内の関連部署に対して関連部署の品質目標を明確にすることを定めた品質マニュアルが必要となります。このような品質マニュアルを,指名したマネジメントの責任者(管理責任者)に作成させるのがトッマネジメントの役割です。 

規格は,この項番で,規格1適用範囲 1.1一般のa)b)項を具現化させようとしています。従って,品質保証のメインテーマである,「製品要求事項を満たすために必要な品質目標(7.1a)項)」と,それを確実に実行するための目標と,「顧客満足の向上のためのシステムの継続的改善の目標」の設定,実行,チェック,アクションを示すことになります。 

「製品要求事項」関連は,関連する部門は必須であり,「顧客満足の向上」は全組織で取り組む目標(課題)となります。

課題を実現することで,目標が達成できるとも考えられますので,制約だらけの硬直した後ろ向きの目標だけでなく,活動感のある,前向きな,達成感を味わえる目標項目も設定すると,「元気の出るQMS活動」となります。 

「顧客満足の向上のためのシステムの継続的改善の目標」を設定していない組織の多くは,規格8.5.2予防処置が,可視化されることなく顧客満足の向上の歩みが遅くなるという共通点があります。QMSが期待するほど経営に役立っていないと思っている企業は,プロダクト,プロセス,業務の改善目標を設定することで増収・増益が期待できます。 

品質目標においての条件としてあるのは,品質目標は,品質方針に合致していなければならないことです。この品質目標は,「Quality objectives」ですので,必ずしも定量目標でなくとも,その達成度が判定可能であればよいとされています。  

なお,この二つ以外の目標を追加で設定するのは自由です。

2012年4月23日月曜日

QMS:規格5.3 品質方針


規格は,経営者に対して,品質方針がa)からe)であることを「仕組み」として構築させ,MRなどで自分の目でその顛末を確認することを要求しています。この規格はアングロサクソンの思考ですから,日本とは異なり「トップダウン」でものごとを「大所高所」から「下位・詳細」に向かって,論理的に展開しています。
) 組織の目的に対して適切である。
b)要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。
   ) 品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。
) 組織全体に伝達され,理解される。
) 適切性の持続のためにレビューする。 

日本では,作成した経営者は別にして,社是・社訓や経営理念は,従業員としてはなんとなく精神論的なもののように考えがちで,経営方針においても同じ場合があります。
従って,品質方針も,日本的には,「頑張るぞ!,目指すぞ!,達成するぞ!エイエイオー」の標語のように考えられがちです。

しかしISOは,実は真面目に品質方針を品質関連文書の頂点として,品質マニュアルや下位の品質文書を従えているものです。 

品質方針は,多くの場合品質マニュアルの中に書かれており,その頁の写しを事務所玄関,受付,応接室などに飾っていることが多いです。審査員に「品質方針って何ですかの」の問いかけに答えられるようにと,審査員の背中の壁に貼り付けてあることがありますが,真っ新だったり,変色して年代物かどちらかが多いようです。

経営方針というものが浸透し,使われているのであれば,品質方針は別に作成せずともその構成項目でもよいと思います。

2012年4月22日日曜日

QMS:規格5.2 顧客重視


「顧客重視」,日本では「顧客第一」「お客様は神様」と同じと考え,また,誰しも朝晩の挨拶のように口にしますが,普段の言動を見ていると首をかしげたくなるヒトが,経営者にも時々います。また,上司から「あいつは切れる奴だ,将来有望だ」といわれているヒトの中にもよく見かけます(ました)。 

「顧客第一」を貫くと,顧客の方を向いてビジネスをすると,上司の受けが悪くなり,社内での評価は下がり,最悪は,「濡れ衣を着せ」て,左遷や退職勧告ということもあるようです。 

それはさておき,JISでは,あまりにも当たり前で挨拶のようですので,「ISOは建前」と勘違いする可能性があります。(私も,当初,そう思いました)

従って,ほとんどの品質マニュアルは,規格の裏返しが多いようです。 

ここは,(7.2.1及び8.2.1参照)となっているので,思い込みや手前勝手な「顧客要求事項」を設定しないように,「顧客目線」で「製品」の「顧客要求事項」を決定し,実現し,市場に出して,「顧客の反応」を見ることを,「仕組み」として構築させ,MRなどで自分の目でその顛末を確認することを言っています。 

トップダウンというか,時間軸を逆にして規格は書かれることが多いように思います。従って,ここは,この規格の「肝」の部分となるように,読み手が勘違いして,「建前」と思わないように,「本音」「本気」と覧て,後続のプロセス(7.2.1及び8.2.1)によりつながるような書きっぷりが良かったように思います。

JIS翻訳者の深読みや親心はよく分かりますが,一方,現実の企業経営や部門運営は甘くはないのですから,組織がしっかりと考えないといけないように表現は,「直訳」か「カタカナ」でも良かったのかも知れません。

2012年4月21日土曜日

QMS:規格5.1 経営者のコミットメント


アングロサクソンの思考でこの規格は組み立てられていますので,何をやるにもトップダウンの考え方で記述されています。

従って当たり前ですが,経営上のこと,製品の品質を確保したり,有効性の改善に関する仕組みについても経営トップが号令をかけ,旗振りをするものだと考えると規格の要求が理解し易くなります。 

経営トップの中には,QMSにほとんど関与しないにもかかわらず,QMSは役に立たないと嘆く方がおられますが,是非,リーダシップを発揮し,良い仕組みに改善した頂きたいものです。 

コミットメントのために経営トップは,規格5.1項のa)~e)の5項目を実施していることを「証拠」として「示す」ことを要求されています。

しかし,品質マニュアルでは,企業によってはこの5.1項は,ほとんど規格の裏返しどころか,そのまんま記述していることがあります。これでは一体,誰に向かってコミットメントをせよと言っているのか不思議な気持ちになります。企業が社長に言っているとすると「ちょっと」変ですね。

品質マニュアルには,5W2Hで,「こうやるぞ!」と決めてから,その仕組みを書いて欲しいです。 

c)項に関しては,他の項と違い,「確実にする(ensuring)」となっていますので,経営トップ自ら品質目標を設定しなくともよく(もちろん設定しても問題ありませんが),確実に品質目標が設定できる様な仕組みを作って運用することを求められています。 

この5.1項に関しては,その詳細については,他の項番の要求事項となっていますので,その関連,繋がりを明記することになります。