ISO9001:2008(2000)規格に限らず認証規格は、審査登録に直接関係する項番に関心がありますが、序文や適用範囲、引用規格、用語・定義にも、実は構築・運用・再構築に非常に有益なことが書いてあります。
特に、ISO9001に基づくQMSを構築.運用されていて、「あまり経営に効果が得られない(利益が上がらない)」と感じている企業は、原点に戻って考えた方がよいと思います。
ISO9001規格に基づくQMSを構築するときは、大半の企業は、規格のことがよく分からず、認証登録用のコンサルを受けます。この状態は、黎明期と呼べるもので、「ともかく登録しなければならない、登録証が必要。登録すれば、社員の意識が変化していき、社内ルール・基準も整備され進化していくので、そのうち売上や利益も上がる」と考えがちです。
しかし、現実は成長期(発展期)・成熟期(全盛期)用のコンサルを受けておらず、すぐに形骸が始まり、衰退期になっている企業も多いように思います。
例えば、年に数回「ISOの日」があって、日常的に発生する「ムリ・ムラ・ムダ」を廃して、効率的・合理的・経済的な記録の作成を行ったり、誰も見ないホコリをかぶった品質文書に対して、組織変更に関する改訂を加えたりして「外部審査対策」を行っている。
或いは、仕事(プロセスの一部或いは全て)には目的がありますが、その目的達成のための仕事ではなく、仕事のための仕事を行って、効果・成果がでないと、ISOの意図とは異なる考え・行為をしていても「ISO」の性にしているという「怪情報」が漏れ聞こえてくることがあります。
ISO9001:2008改訂の大きな目的であった「Output
Matters」(QMSが認証されていても、そのアウトプットである製品の品質が保証されるとは限らないという問題)について、企業・コンサル・審査員の認識については少し寂しい感じがします。
気を取り直して、
規格0.1序文に、「QMSの採用は、組織の戦略上の決定によることが望ましい(Shouldです)。組織におけるQMSの設計及び実施は、次の事項によって影響を受ける。
a)組織環境、組織環境の変化、及び組織環境に関するリスク
b)多様なニーズ
c)固有の目標
d)提供する製品
e)用いるプロセス
f)規模及び組織構造」
とあります。
ここで重要なのは、ISOに基づくQMSの活動は、「戦略上の決定」であり、「戦術上」ではないということです。多くの企業は、戦略ではなく戦術として登録・維持していると思います。
次に重要なのは、「組織におけるQMSの設計及び運用」という記述です。自組織にあった「設計」と「運用」について、その要素を6項目示しています。
多くの企業は、コンサルの雛形をベースに品質マニュアルや下位の品質関連文書(含む記録の様式)を部分改訂しています。このこと自体悪いことではありませんが、一番の問題は、「設計」をせずに、いきなりコンサル雛形を自社向けに字句のみの修正をしていることです。
事業目的・目標を「見える化」し、「問題と課題を仮置き」し、「現状分析とあるべき姿からのギャップ」を明らかにせずに、文書の字句修正をしたのでは、「課題は実現せず」、「問題は解決されず」、従って「事業目的・目標」は実現することは、「棚ぼた」を期待するようなものです。
目標を定め、実現可能となるような計画を立て、着実に実行する、モニタリングコントロールも手を抜かず、修正すべきは修正する。QMSの構築は、ISO9001が標榜するPDCAを廻すことの予行演習のようなものです。
もし、構築時にやるべきことをしていなくとも、今からでもよいですから、規格が示してくれている視点(上記a)~f))で「再設計」をすることで、「利益が出る」仕組みに変えることができます。
次回に、もう少し、「序文」の解説をします。
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